こんにちは。
私の仕事での児童指導員としての立場と、算数につまずきのある子どもを育てている保護者の立場から、このような研修会に参加してきました。
算数は、音楽とも大きな繋がりがあります。
音楽は、算数的に理解する人と、感覚だけで理解する人と、色々です。
でも、つきつめていくと、やはり算数から切り離せないものでもあります。
そのような興味深い、「算数」ですが、
算数のつまずきに対しての研究は、意外とまだあまりすすんでいないのが現状で、
色々な研究者によりまだまだ研究されつつあります。
算数障害や、書字、読字障害を含む学習障害(LD)を扱う病院や施設はとても少ないですが、関西では、大阪医科大学のLDセンターが有名です。
そのLDセンターで、
2019年1月31日(木)に、
算数のつまずきの理解
~算数ができないのか、どう教えればよいのか~
という学習講演会があり、参加してきました。
とても勉強になったし、必要としているみなさんとシェアすることで、
一人でも、算数につまずき、しんどい思いをしている子どもたちの助けになれば良いなぁという思いで、
学んだことを、まとめて書いていきたいと思います。
★講演の流れ
①算数に必要な力
②つまずきの要因
③援助の具体的な方法
④目標設定と合理的配慮について
◼️算数の理解に関わる認知とは
言語・視覚空間認知・目と手の協応・同時処理・継次処理(手順)・ワーキングメモリー・注意・プランニングといった多くの認知能力が必要となります。つまり、知的レベルの影響が大きく関係してきます。
◼️算数に関わる要素には
数の表現の形・数量概念・計算・文章題・図形の5つの要素があります。
1つ目にあげた数の表現の形とは
①数詞:「さん」数える・数字を読むときのこと
②数字:「3」と書かれた記号のこと
③数量:具体的な数や量のこと
2つ目にあげた数量概念とは
①連続量・・・長さや大きさなどのようなつながり
②分離量・・・●● 〇〇〇 のように1つずつわかれている量のことです。
計算には、数字と数量の結び付きの弱さが影響してきます。
文章題だと、問題を読み取る手順や言葉や文章を理解することが必要です。(国語力含む)
図形は、長さ・大きさ・角度などの異同を理解する力や二次元に書かれたものを三次元としてイメージすることがもとめられます。(空間認知、立体・展開図など)
◼️数量概念の理解に必要な能力として
同時処理ができること(ぱっとみて大まかな数量やその違いを把握する能力)
空間認知ができること(大きさや長さなどの連続量の把握・位取りの理解)
継次処理ができること(順番に数える)
言語:数詞とその順番を覚えて言うことができる
以上のことがあげられます。
この4つが出来て初めて数量概念を理解することができます。
このようなことに、つまずきのあるお子さんには、合理的配慮や、具体的な援助が必要になってくるでしょう。
まず、子どもがどこに困りがあって、なににつまずいていて、どうすればそれを緩和できるのかということを見極めていくことが求められます。
算数を理解するのには、たくさんの認知機能を働かせないといけないので、どこにつまずきがあるのかがわからないままその場限りの支援をすることは、その子どもの算数理解に有効ではないということがわかります。
実は、算数の概念が理解できていなくても計算をできる子どもは多くいます。
そんな子どもたちは、1、2年生の間は学校でもそのつまずきに気付かれない場合もあります。
学校では、算数の基本である概念を理解するための時間は多く取ってもらえません。少しやると、すぐに数字を並べて計算のやり方を学び、その反復練習をします。
概念的な理解でつまずきがある場合は、もう一度その子どもに合わせて、具体物を使いながら理解につなげていく必要があるでしょう。
ここからは、今まで関わったことがある子どもたちや、聴かせていただいた事例を少しあげてみます。
◇Aちゃんの場合
・○+○= という数字の計算はできる。
・これは何個かな? ●●●●● ●●
という課題に対して、「52」と答えてしまう。
★Aちゃんは数字の形の認識や記憶力はバッチリ!その得意分野を使って、計算式を丸覚えするという方法で、学校での算数のドリルなどに対応してきたと考えられますが、意味の理解はできていないため、丸覚えができない数になっていくとつまずきます。また、位取りができていないこともわかります。
◇Bちゃんの場合
・ ○○○
+○○○
---------------------
このような筆算ができる。
・お金を出してきて ⑩⑩⑩⑩ これはいくら?
という問いには答えられない。
★Bちゃんも、計算のやり方を一生懸命覚えて練習してきたのでしょう。でも、紙面上で答えを出すことで終わってしまい、実際の生活に使う算数にはつながっていないことがわかります。
◇Cちゃんの場合
・足し算や引き算の筆算のやり方(くりあがり、くりさがり)を知っていて、計算することができるが、間違いが多く、間違いをする箇所が、その時その時で違っている。
★Cちゃんは、間違いの箇所が、色々、というところに視点をおくと、やり方はわかっているのに、どこかの計算の過程でやるべきことがぬけるのです。
それは、ADHDからくる「不注意」が原因であることが考えられます。また、これの次はこれをする、という順番がとびやすいことなども考えられます。
算数のつまずきは、ただ算数が苦手、という単純なものではないことがわかります。
算数は答えが一つだから、それを最終的に答えなければいけないという、プレッシャーがあります。
正解か間違いか、そこにとらわれがちですが、
それだけではなく答えがでる過程もとても大事で、
そこをがんばっているこどもたちを認めてあげることも大切だと、お話の中にあり、本当にそうだなぁと感じました。
◼️具体的な手立て
計算が間違っているからといって、「これはこうするんだよ」とその場限りのやり方を教えるだけでは、根本的な支援にならないことがわかりますね。
先程も述べましたが、学校の授業では、概念の理解の部分が短いし、黒板や紙面上での説明で終わってしまうことが多くあります。
その基礎の基礎の部分に戻り、そこを何度も、具体物を使いながら理解することが、まずは大切でしょう。
AちゃんやBちゃんのように、記憶力だけで計算のやり方を覚えているのに、意味の理解が乏しい場合は特に、
子どもたちが幼稚園や保育園時代に遊びの中で経験するような数の操作から、しっかり底上げしていく必要があるでしょう。
積み木や、ブロック、おはじき、おままごとの道具など通して、
手にとって(これが大切!)、数えること、並べること、
数が増えたり減ったりを、目で見て、声に出して、自分の手で操作しながら体得していくことが大事です。(触覚が過敏なためなのか、操作にも抵抗があるお子さんの事例もあげられていました。)
数の表現の形や継次処理、空間認知などは、そのような具体物の操作から学ぶことができるでしょう。
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● ● ● この固まりも
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この固まりも
広さは違うけど、数は同じですね。
そんな経験も大切です。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●
これは
●●●●● ●●●●●
●●●●● ●●●
こう並べると数えやすいな!
と数えながら気がつくことが大切。
そう、実際に数えてみることは、
並べることの必要性を感じる、
そして、数の固まり、位取りへと発展していきます。
タイルやブロックを使い、10の固まりの理解、そこから、位取りの理解へ。
操作に慣れてきたら、
百玉そろばんなどを使うと良いようです。
積み木やブロック、タイル
↓
百玉そろばん
↓
タイルなどの図
というように段階を踏むと良いそうです。
それらを使いながら、くりあがりやくりさがりのしくみ、
位のしくみ(10進法)などの理解へ促します。
計算のやり方がわかっているのに、やる事の順序を間違えてしまったり飛ばしてしまったりするお子さんには、
計算のやり方の順序を、その子のわかりやすいやり方で提示し、確認しながらすることが大切であるかもしれません。また、計算する時、位がずれたりしないように、紙面上での工夫が必要な場合もあるでしょう。書くスペースの広さや罫線も重要な要素です。
私たちは普通、20ぐらいまでの計算は、「自動化」といって、経験から、いつの間にか考えなくても記憶で計算することができることが多くなります。8と2は10 のように。
しかし、算数につまずきやすい子どもたちは、その「自動化」がされにくいこともわかっているそうです。ですから、理解していても時間がかかってしまい、問題を時間内に解けない場合もあります。
時間の配慮も必要ですね。
また、数の理解がすすんでからも、自動化をすすめるための、視覚イメージ(空間認知)を助けるツールは必要だということがわかります。
たとえば、このような図や表を、いつでも見ることができるように持っているのも良いようです。
もちろん、その子どもの特性に合わせ、見やすく理解しやすいものを。
数の意味がわかっていても、記憶力が弱いことで、九九が覚えられないなどのつまずきにがある子どもには、無理に覚えられない九九を覚えさせることに長い時間費やすよりも、
九九表の見方を覚えて、それを見ながらかけ算の問題を解くことへ進んだほうが良い場合もあります。
◯文章題を解くことへの支援
文章題を解くためには、まず、その文章に何が書いてあるのかを理解する読解力が必要です。
そこで、こんな文章題プリントを用いているそうです。
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◯一枚のプリントに、一問の文章題
①文章の中にわからない言葉がないか確認する設問
②何がきかれているのかを確認する設問
③文の中で、すでにわかっていることは何かを確認する設問
④図や絵で表す
⑤式を立てる
⑥計算する
⑦答えを出す
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このステップで解くと、順序だてて考えることができる上、
支援者側としても、どこにつまずいているのかがわかりますね。
◼️目標設定と合理的配慮について
ここまであげてきたような、その子その子にあった支援ツールを使ったり、時間を延ばしたり、計算スペースの工夫をしたり………
読みが苦手な場合は読み上げることをしたり、書くことに困難があれば、代筆やほかのツールをつかったり‥‥‥‥
そのような「合理的配慮」をしていくことはとても大切でしょう。でも、それを他の友だちもいる所で使いたいかどうかは、それぞれです。本人のつまずきだけでなく、本人がどうしたいかという気持ちも重要になってくるでしょう。その気持ちも汲みながら、どのような支援していくかを考え、選択していくことが重要と考えます。
また、忘れてならないのは、目標設定です。
特に、それについては、保護者がしっかりと考えて提示していくべき事です。
将来的に、こんな事ができるようになるために、これを学んでほしい、という具体的な目標です。
それにより、学習の質がかわります。量ではなく、質を大切にしたいですね。
学校側はどうしてもこの学習の次はこれ、とか、これができるならこれもできるはず、と、次々に課題をあげていきがちになります。それは当然のことなのですが、算数へのつまずきが大きいお子さんにとっては、後々使わないかもしれないことに時間を費やすより、将来的に使える算数を獲得することに重点を置いたほうが良い場合もあります。実際の生活の中では、むずかしい筆算をすることはほとんどありません。それよりも意味を理解する事に重点を置いて、式を立て電卓で答えを出すことができた方が、役にたつかもしれませんね。(これは、ほんの一例です)
そして、やはり何より大切なのは子どもたちの気持ちです。苦手なものに取り組むのは大人でも大変なことですよね。わからないこと、できないことがあっても、こうすればわかる、これを使えばできる、という「自分でできる!」の積み上げが自信につながり、次への学習意欲につながっていくでしょう。
今回のこの研修会に参加させていただき、この文章を書かせていただいている私自身は、「支援者」としての立場でもあり、算数につまずきのある子どもを育てている「保護者」の立場でもあるため、両方の立場からの学びが多くありました。
算数学習の目標をしっかり考えることや合理的配慮についての検討、そしてそれらをしっかり共有することが、保護者の役割としても、保護者と学校の間にいる立場としても、とても大切なことだと学ばせて頂きました。
その他、配慮された文房具などの紹介もありました。
それについては、長くなってしまうので、またの機会に紹介させていただこうと思います。
最後に‥‥‥
研修会に参加させていただき、覚書として、また、同じ悩みを持っている方々と共有できたらという思いで、ここにまとめさせて頂きましたが、先生のお話と私の思いとが途中混ざってしまっています。私の耳で聴き変換されての拙い文章で、大変申し訳ありません。
くわしくお知りになりたい方のために、書籍の写真も貼っておきます。